1月から当館では「室生寺」ほかを展示中です
こんにちは、スタッフKです。今年はどんな年越しでしたか?
私はこの年末年始はゆっくり本を読み、映画も見ることができました。映画は渡辺智史監督「YUKIGUNI」。そして本は講談社文庫、岡田芳郎著「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」。映画は昨年から上映中だし、本も2008年に出版されているので、えー、今なの?遅れてる…と思われたかもしれませんが、出会うタイミングというか、ご縁が今私に巡ってきたという感じです。
先月、レストラン「ル・ポットフー」で忘年会をした際に、たまたまこの文庫本(2018年11月第2刷発行)を見つけて、「単行本は読まないでしまったから、この機会に」と手に取りました。これは本のタイトル通り、世界一の映画館「グリーン・ハウス」と日本一のフランス料理店「ル・ポットフー」を酒田に作った、佐藤久一氏の生涯をたどるノンフィクションです。
土門拳も酒田に来ると必ず佐藤久一さんのいる「欅」や「ル・ポットフー」を訪れ、彼のフランス料理を食べたといいます。そして、今もル・ポットフー店内には、1975年の開店当時土門拳が贈ったというピカソのデッサンが飾られているのです。
昭和59年頃、初代館長の三木淳先生に連れられて初めてル・ポットフーに行った田舎娘の私は、佐藤氏が一皿一皿紹介してくれる、それまでお目にかかったことも無い料理(ガサエビのスープやパイシチューなど。メニュー上はもちろんもっとかっこいい名前だった)の美味しさにびっくり。この本を読んで、佐藤久一氏やマダム鈴木新菜さんの醸し出す、店の大人の品格・雰囲気に圧倒され憧れたあの時の胸の高まりが、鮮明に懐かしく蘇りました。
また、映画「YUKIGUNI」はケルンの92歳現役バーテンダー井山計一さんのドキュメンタリー。具体的な映画の紹介はここでは控えるとして、別のドキュメンタリー映画「世界一と言われた映画館」ともあわせて、井山計一さんや佐藤久一さんはもちろん、その他にも重なり合ういろんな人生に思いを馳せ、その重みがジワリと心に響いてきたのでした。酒田ってこんな街だったんだ、人生と出会いが街をつくっているんだ。
本や映画によって、忘れかけていた大切な宝物が蘇ってきた気持ちです。この魅力的な酒田にあった(いや今も生きている)粋な文化に宿る思いを、当館でも受け継いでいくのだ、という気持ちを新たにした2019年の幕開けでした。
※上記2本の映画は、今月から東京ほかでも上映されています。ぜひ、ご覧ください。