今日の飯森山公園。すっかり晩秋の装いです
こんにちは、スタッフKです。もう11月下旬。いつ雪が降るか、タイヤ交換するか、ドキドキするシーズンがやってきましたね。
今、当館では「かお かたち 土門拳のまなざし」を開催中ですが、その中に土門作品としては異色の「女優と文化財」シリーズの中から9点を展示しています。
これは昭和39年の正月号から翌40年12月号まで2年間に渡り、月刊誌「婦人公論」の表紙のために撮影された作品です。
昭和39(1964)年は東京オリンピックの年で、当時の編集長・三枝佐枝子氏の「五輪で来日する外国人にも日本の文化財を紹介したい」という熱意から、当時の超一流女優と国宝級文化財を組み合わせた表紙写真、という企画が生れました。それは、単に土門拳が撮影した写真に女優さんを合成する、ということではなく、実際に文化財のあるロケ地で撮影し、真の古典と現代の融合を試みるという、大胆な不可能に近いと思われる企画でした。当初、土門拳は女優さんに合わせた撮影はできないと即座に断ったそうです。しかし、何度も何度も自宅に通われる編集者についに根負けし、「女優を泣かせるけどいいか」の条件でスタート。勿論、文化財の選定は土門拳。契約は当初1年間でしたが大好評につき、もう1年延長されました。衣装デザインは森英恵です。
実は土門は女性には優しく自分では直接言えないので、注文を付ける時は弟子に「言って来い」と指示したという話。土門も弟子も撮影当日まで国民的スター吉永小百合の顔を知らなかったという話。岡田茉莉子さんがそんなに仏像に近づくとは夢にも思わなかった住職が、現場を見てカンカンに怒って撮影中止となったけれど、執念で1枚成功させたという話。などなど撮影エピソードは尽きませんが、写真を見ると、本当にこんなスゴイものに女優さんが大接近して(中には直に触れて)撮ったというのが信じられません。
社会派の土門が、いつもとはちょっと違う顔で撮ったかもしれない、岩下志麻さん、若尾文子さん、吉永小百合さん、三田佳子さん、佐久間良子さん、などなど国宝級文化財に負けない当時10代~20代の大女優と土門拳の融合オーラをぜひ見に来てください。(12月24日まで開催、12月は月曜休館)
「吉永小百合さんと深大寺釈迦倚像」婦人公論1965.8月号